不妊治療と女性メンタルヘルスの関係
☆トピックス☆
高度不妊治療をこれから始める・始めた女性500人を対象に1年間の追跡調査を実施され、不妊治療を受けている女性のこころの状態が徐々に明らかに
国立成育医療研究センターは2021年4月15日に、海外先進国における知見と同様に、日本においても高度不妊治療を受ける女性の心の健康状態が悪化している可能性を明らかにしたと発表しました。この研究成果は科学誌「Scientific Reports」に掲載されています。
日本は少子化傾向にある一方で、不妊治療を受けるカップルが一定数いると言われています。実際に、子どもの約16人に1人が高度不妊治療で生まれており、世界で最も多いです。
海外先進国においては、不妊治療患者を対象とした調査が盛んに実施されており、不妊治療は、患者（主に女性）の心身に大きな負担を伴うことが明らかになっています。しかし、日本では、不妊治療が盛んに実施されているにも関わらず、大規模な調査が実施されていませんでした。そこで成育医療研究センター社会医学研究部では、4つの医療機関およびインターネットを通じて、体外受精などの高度不妊治療を始める、もしくは始めた女性約500人に対し、約1年間の追跡調査を実施していました。
不安の高まりやQOLの低下、特に20歳代の調査参加者でメンタルヘルスが悪い傾向
今回研究グループは、同追跡調査の初回データを用いて、高度不妊治療開始初期の女性（主にこれから治療を開始する、もしくは採卵2回までの人）のメンタルヘルスの状況を明らかにすることを目的として研究を行われました。
その結果、軽度以上の抑うつ症状ありと判定された参加者の割合は54％だった。また、不安が高まっている状況と判定された割合も、39％と高い割合を示したという結果でした。
特に、20歳代の参加者の群における抑うつ症状の分布では、「軽度以上の抑うつ症状あり」が78％で、参加者全員における割合の54％と比較して、高くなっていました。
健康関連QOL尺度（SF-12）を用いたQOLの評価でも、国民標準値である50と比較して、社会生活機能は41.7、日常役割機能（精神）は40.4、心の健康は42.6と低下の傾向が見られました。
現在、不妊治療の経済的側面への支援の拡充（保険適用）の議論が進んでいますが、今回の研究により、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても更なる支援が必要だということを示唆されただけでなく、こころが持たないことで不妊治療を継続できなくなるという現実的な可能性も示唆されました。
不妊治療で疲れを感じた方、お気軽に女性のこころのケアに専門性を持つ当院までご相談ください。
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